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執筆者の写真WeatherDataScience

九州北部の豪雨(2020年7月6日)でモデルと実況が乖離していった話

九州地方を中心に、梅雨末期の豪雨が押し寄せました。7月4日は熊本県の球磨川が氾濫し、7月7日には大分県日田市で筑後川が氾濫しました。


ちょうど7月6日、福岡県に住む知人が日田市の方に行くかもと言うので、「日田市の方も危なそう」と話したところだったので、その翌日の筑後川の氾濫はホントにびっくりしました。


そんな感じで7月6日は気象レーダーや数値予報モデルMSMを頻繁にチェックしていましたが、夕方前から両者に乖離が出てきたことに気づきました。やっぱ梅雨期の予測は難しいんだと思いつつ、なぜこの乖離が発生したか考えてみました。


このブログを書いている7月8日の時点ではまだまだ梅雨末期の大雨の時中ですが、記録として書き記したいと思います。



モデルと実況の乖離

まずは気象レーダーから。13時・14時の時点では、長崎・佐賀・福岡に真っ赤な(非常に強い)降水エコーがかかり続けていました。


MSM 00zベースの13時・14時の予想降水量と比べてみます。予想図の降水量は前1時間積算なので、厳密にはスナップショットの気象レーダーとは違いますが、長崎・大分・福岡に雨雲がかかり続ける様子は表現できているように見えます(降水強度としては不十分かもしれませんが…)


これが夕方前くらいから徐々にずれてきました。


まずは気象レーダー、18時と20時20分です。佐賀・福岡にかかっていた強い降水エコーが、やや南下して熊本北部にかかるように変わっています。 (キャプチャしたタイミングの関係で中途半端な時間になってしまいました)


次にMSM。左図は06zベースのFT03、つまり18時の予想図。右は09zベースのFT03、つまり21時の予想図です。どちらも佐賀・福岡に強い降水域を予想しており、実況でみられた熊本北部への降水帯の南下を予想できていません。


ここで興味深いのは、09zベースで実況とモデル予想の乖離を修正できていない点です。06zベースにあった予実の乖離を最新ベースで修正できない、これはデータ同化の限界なのかもしれません。



なぜ降水帯は予測と違って南下したのか?

なぜMSMは降水域の南下を予想できなかったのか、気になるところです。調べてみると、アメダスの観測にヒントが見つかりました。


13時の気象レーダー、アメダス風、アメダス気温です。この段階では南西風が佐賀・福岡まで入っており、気温も26度前後で佐賀・福岡と熊本で大きな差はありません。


この状態が18時のデータを見るとだいぶ異なっています。南西風が熊本までしか届いていません。そして南西風が入っている熊本は気温26度以上あるものの、佐賀や福岡は22度前後まで下がっています。そしてこの風・気温の境界と、強い降水エコーの位置はよく一致しているように見えます。


ここまでの状況証拠から推測すると、長崎・佐賀・福岡では日中に強雨が続いたことで冷気がたまり、この冷気層と南西風が収束して雨雲を発生させる位置が南にずれたことで強雨域が熊本北部まで南下した、という仮説が立てられます。


では「なぜ冷気層が夕方前のタイミングで形成されたのか?その必然性は?またMSMはなぜそれを予測できなかったのか?」というと、もはやこの問題は研究レベルのテーマになってくると思いますので、私にもわかりません…


ただ、(図をキャプチャしそびれましたが)LFMは熊本北部にかかる線状の降水域を予測できていました。LFMはアメダス観測もデータ同化していることを踏まえると、上記仮説も全くの見当違いではないだろうな、と思っています。


梅雨の大雨が落ち着いたら気象庁や研究者が振り返り研究をされると思いますので、期待して待ちたいと思います。

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